磁器をやる人には心強い町です

器作家/デザイナー
宮﨑雄太さん(37)
福岡県久留米市出身

-有田町への移住を決められたきっかけは?

京都の美術大学でグラフィックデザインを学んだあと、東京のデザイン事務所で5年半働きました。その後デザイナーとして独立しましたが、机上のビジネス中心の仕事のあり方に疑問を感じ始めました。純粋に「ものづくり」がしたい、自分がいいと思って作ったものを購入してもらい生活を営む、そういうことがしたいと思い、(作るところから販売まで)自己完結できるもので、一般家庭に溶け込んでいるもの、と考えたときに、陶芸、器をやろうと決めました。それまで全く陶芸をやったことがなかったので、まずは陶芸ができるところを探しました。そのなかで、有田に窯業大学校(窯業の専修学校、現在は閉校)があるのを知りました。

-移住するまでの流れを教えてください

有田には29歳で来て、今年で8年目になります。窯業大学校で2年学び、卒業後はろくろ座(陶芸の体験工房)に2年勤めました。その後、赤絵座(作陶を行う若手作家へ提供されている工房)に入り、そこに3年在籍した後、今は内山地区(陶器市の通りで知られる重要伝統的建造物群保存地区)に店舗兼工房兼住居を構えています。

-今の拠点にたどりつくまでに、苦労されましたね

赤絵座の契約が終わるので、もう後がありませんでした。色んな人に物件を紹介してもらったり、かなりの数を当たりましたね。場所も有田の内山地区にこだわりました。自分の作品を知ってもらう上で、陶器市が開催されるこの通りの知名度や恩恵に授かりたいと思ったのと、有田町が運営するろくろ座や赤絵座に長年お世話になったので、町には感謝の気持ちもありました。なので簡単に別の場所に行くわけにはいかないぞ、と(笑)。

-有田の魅力は?

焼きものに特化した町であることでしょうか。石膏にしてもろくろにしても先輩がいっぱいいます。実際に作っているのを見られるし、頼めばちょっとした指導や相談も受けてくれる。有田を含む肥前窯業圏は焼きもの、特に磁器をやる人には心強い地域だと思います。

-移住して苦労していることは?

お金ですかね(笑)。デザインの仕事を受けても、地方では東京の3分の1以下の報酬です。器も労力に見合った収入が得るのは難しい。今後は、その辺の収益化をしっかり考えていかないといけないと思っています。

-これからやってみたいこと、挑戦したいことは?

飲食店で自分の器を使ってもらって、お客さんがいいなと思ったら、その場でダイレクトに買えるようなことができたらと思っています。それが自分の拠点のそばでできたら。

-有田がどんな町になったらいいでしょう?

有田に来ても、今はお客さんの滞在時間が短いですよね。焼きものが好きな人以外も、半日、できれば1日滞在できるような町になるといいですね。有田に来て器を買うだけでなく、色々なことを体験して楽しかったなあと思って帰ってもらえれば。そういう町になるといいですね。

-有田への移住を検討されている方へのメッセージやアドバイスを

どこにいてもお金を稼げるだけのスキルは持っていた方が良いですね。地方移住においては行政に頼りがちですが、基本は自分で何とかするという気持ちが大事です。そういうスタンスの人はこっちに来ても色々発展させていけるのかなと思います。移住者は覚悟を決める、そして受け入れ側はできるだけのサポートをする、というのが望ましいですね。(了)